八方出汁(はっぽうだし)
【簡単な割合比率と作り方のコツ】
今回は八方だしの作り方やだしの意味、煮物の味つけに困ったときの対処方法などをご紹介したいと思いますので、和食調理の参考にされてはいかがでしょうか。
だし汁とは?八方だしの作り方と味つけに困ったときの対処方法
【だし汁とは?】
動物性や植物性の材料を煮出したり、水の中に浸して食材の持つ旨味成分を抽出した汁のことです。
和食の代表的なものでは、かつお節を煮出す「かつおだし」や昆布を水に浸したり、水から火にかけて旨味を抽出する「昆布だし」があります。
そして、味の相乗効果を利用し、昆布とかつお節の旨味を合わせて美味しさを何倍にもする「かつおと昆布のだし」が有名です。
他にも「だしじゃこからとる煮干しだし」や干し椎茸をもどすときに出る「椎茸だし」、旨味が強い「貝類(ハマグリやシジミ)から出るだし」等があります。
調理の際は、これらを単独、または、それぞれを組み合わせて味の効果や食材の相性を利用し、作る料理によって各だしを使い分けています。
「食材の持つ旨味成分」
かつおの旨味成分 | イノシン酸 |
昆布の旨味成分 | グルタミン酸 |
椎茸の旨味成分 | グアニル酸 |
貝類の旨味成分 | コハク酸 |
西洋料理の場合は和食のだしにあたる煮出し汁のことを「ブイヨン」と呼び、英語では「ブロス」といいます。
「ブイヨンの種類」
■ ブイヨン・ド・ブフ
牛の骨や筋、すね肉から煮出したブイヨンで、主に肉料理に使われます。
■ ブイヨン・ド・ボライユ
鶏がらから煮出したブイヨンで、牛よりも淡白なことから料理全般に使用されます。
■ フュメ・ド・ポアソン
魚の骨から煮出したブイヨンで、主に魚料理に使用されるほか、ソースにも使われます。
■ ブイヨン・ド・レギューム
野菜のブイヨンのことで、魚を煮込む料理に使われます。
この他にソースとして使うだしには「フォン」があり、一般によく知られている「フォン・ド・ヴォ―」は仔牛のだし汁という意味です。
フォン(だし)ド(~の)ヴォ―(仔牛)
■ フォン・ド・ボライユ(鶏のだし)
■ フォン・ド・ジビエ(野鳥獣のだし)
野鳥獣とは鹿、いのしし、きじ等です。
※ フォンはソースを作る場合や煮込み料理の下地に必要な「だし」ですから、スープを仕立てるときの「ブイヨン」の代用品としては使いません。
中国料理では、だしのことを「湯(タン)」と呼び、スープという意味があります。
また、最初に煮出した上質のものを上湯(シャンタン)または頂湯(ディンタン)といい、「上湯スープ」が有名です。
■ 味の相乗効果につきましては≫「料理の味つけ【味の効果4種類】相乗、対比、抑制、変調効果」に掲載しております。
八方だしの割合例【だし:醤油:みりん=8:1:1】
【八方だしの語源】
八方だしの八方とは「四方八方」や「八方ふさがり」と同じ意味の言葉で、色々な料理に使える万能だしということからこの名があります。
【八方だしの種類】
八方だしには酒が多めの「酒八方」や、みりんを多くした「みりん八方」、塩をきかせた「塩八方」などがあります。
また、うす口醤油で作ったものは「うす口八方」、濃口醤油を使用した場合は「濃口八方」といい、料理の用途にあわせて割合をかえるため、数種類の「八方だし」が存在します。
比較的使いやすい八方だしの割合
初めに覚えていただきたい割合は【8:1:1】= だし汁8:醤油1:みりん1です。
八方ですので、だしが8と思っていただくと覚えやすく、この8に対して醤油とみりんが同量の各1ずつを加えてください。
そうすると、うすめの天だしや玉子豆腐、温泉玉子、魚素麺の「かけだし」などに使えて煮物や鍋物にも応用がききます。
そして、一般に「煮汁の黄金比」と呼ばれるものは、だしの分量を10~12に増やした調味だしをさす場合が多く、割合を【10:1:1】~【12:1:1】の範囲で調節すると鶏肉や白身魚のあっさり煮、芋類や根菜類の煮物、濃いめの寄せ鍋だしに使えます。
【関連】
【 8:1:1の使用例 】
代表的な料理では濃いめの肉じゃがや筑前煮、うなぎの柳川鍋、なすの揚げ浸し、焼きなすのお浸しなどが作れます。
そして、甘味を強める場合は煮汁に砂糖を加えてください。
■ 煮汁に砂糖を少量加えると、みりんだけのときよりも甘味の角が取れて味がまろやかに仕上がり、お酒を加えると旨味が増します。
【関連】
8を基準にした応用調味だし
それでは、この8を基準に他の調味だしを作っていきたいと思います。
8を半分の4にする
だしを4にして醤油とみりんが各1ということは【4:1:1】の割合です。
この【だし4:醤油1:みりん1】が天ぷらを食べるときの天だしです。
※ 少し濃いめの天だしですので、うすめる場合は「だし」の量を5や6にしてください。
詳しい内容につきましては≫「天だしの作り方手順【4:1:1】の割合」に掲載しております。
続きまして、だしを2倍にいたします。
8を2倍の16にする
こちらも同じ作り方で、だしを2倍にしてください。
この【だし16:醤油1:みりん1】は、寄せ鍋のだしや時間をかけて煮含めながら味を染みこませる煮汁に使えます。
また、うすめに味つけするときの根菜類や醤油をきかせた葉物野菜のお浸し、蒸し物のあんかけなどにも利用できます。
だしを4、8、16で合わせた場合の各調味だしの使用例
「4」
料理を汁につけて食べるときのだし
【例】
天だし、湯豆腐や冷奴のだし
濃いめの麺つゆ
「8」
かけて食べるときや味の染みにくい煮物
【例】
玉子料理のかけだし、油で揚げた煮物
さっと煮あげる煮物
「16」
鍋物や材料を煮含めるときに使う煮汁
【例】
うす味のお浸しや青味野菜、鍋物
上品な炊き込みご飯(松茸ご飯など)
煮物の味つけに困ったときの対処方法
味の濃さがわかりづらいときは、だしを10~12の範囲で煮汁を作ってください。
だし:醤油:みりん=【10~12:1:1】
【例】
この範囲の煮汁を使うと肉じゃが、筑前煮、玉子とじ、魚のあっさり煮、きのこ類、根菜類、芋類、海老の煮物、黄身煮、はりはり鍋や牛鍋などが作れます。
【たき合わせの調理例 ①】
こちらは【12:1:1】の煮汁でそれぞれの材料を煮たものですが、ひとつの器に盛ると「たき合わせ」として利用できます。
【たき合わせの調理例 ②】
■ 煮汁は全て同じものを使用しております。
【補足】
濃いめの味が好みの方は「だし」を8~9に減らして、色をつけたくない場合は白醤油を使用してください。
そして、うすめるときは「だし」を13~20の範囲まで増やしてください。
また、甘味を強める場合は砂糖を加えて、逆におさえるときは「みりん」を酒にかえてください。
そうすると、ある程度の煮ものは、ほぼ失敗なく作れます。
【関連】
≫簡単な調味料割合一覧表
≫八方だしを使った煮物一覧
【参考】
今回は八方だしの作り方をご紹介いたしました。
他のレシピにつきましては≫「本サイトの料理内容一覧」に掲載しておりますので、お役立ていただければ幸いです。
次回は違うメニューでお目にかかりたいと思います。最後まで閲覧していただき、ありがとうございました。